群馬県邑楽郡大泉町発 ”ありがとう” からはじまる異文化理解を育む「絆」の物語

深刻な労働力不足を背景に1970年代後半から外国人労働者(研修生)を受け入れ、異文化理解を育み、生まれた絆の歴史を刻み続ける大泉町。多文化共生の未来を切り拓く「モノの考え方」や40年以上にわたり、先人たちから語り継がれてきた経験、培ってきた知見・知恵を未来のためにご紹介していきたいと考えています。

国際交流の第一歩とは何か?

はじめに<国際交流の第一歩とは何か?>

群馬県邑楽郡大泉町。街の南端を流れる利根川。ものづくりの最前線、ここ大利根工業団地にはいまや50を超える国と地域から人が集まる日本一多文化共生が進む町として知られるようになってきました。

 

町民の6人に一人が外国籍。日系ブラジル人を筆頭に「ものづくり」の現場を「外国人」が支えています。大泉町はこうした製造業をはじめとする企業からの税収も他の自治体と比較すると好調で、長年地方交付税不交付団体を維持し、街に必要なインフラ、公園・緑道・文化施設などハード面での整備は行き届き、緑豊かな工業都市として成長しています。

大泉町における多文化共生のはじまりはいつからだったのか?

1970年代後半。深刻な労働力不足が慢性化しはじめた時代に大泉町インドネシアからの研修生を受け入れるところから始まっています。

 

空前の好景気、バブル絶頂の時代には大利根工業団地をはじめ、ものづくりの最前線では労働力不足はより深刻さを増していました。

 

1989年12月東毛地区雇用安定促進協議会が発足され、故・米澤勝美(1932-2005)丘山産業社長(当時)が会長に就任し、深刻な労働力不足解消のため、外国人を「戦力」として受け入れるために政官民一体となり奔走します。

 

1990年6月入管法が改正され、日系二世、三世に日本での就労が認められてから、外国籍人材の受け入れと協働の歴史は大きく動きます。あれから30年以上の月日が流れ、文字通り酸いも甘いも嚙み分け、日本一多文化共生が進む町へと変貌を遂げた東毛地区、大泉町

サンバの町それから 外国人と共に生きる群馬・大泉

この一冊は上毛新聞社大泉支局勤務が長い和田吉浩氏が中心となって、改正入管法施行以後大泉町が経験した30年以上の試行錯誤の歴史を大泉支局の皆さんが冷静と情熱の間を行きつ戻りつ取材し、驚くほど丁寧にまとめられています。

この町と縁がある方だけでなく、多文化共生に興味のある方、かつてサンバカーニバルに出かけたことがあるなど、大泉町に関心を持ったことがある方に安心して薦められるきわめて優れた良質のルポルタージュ作品です。

政・官・民が一体となり、共に汗を掻き、生きてきた軌跡を丁寧に追い続けてきたこのルポは、日本の未来、多文化共生を考えている政治家、官僚、教育者、学者、外国人雇用を進めている経営者、すべての方におススメしたい一冊でもあります。

間違いなく「日本の未来」、特に少子高齢化による深刻な労働力不足解消、外国籍労働者との協働、多文化共生を考えるうえで、大きな示唆を与えてくれます。

新 移民時代 西日本新聞社

この一冊でも大泉町は取材され、多文化共生コミュニティセンターについて、その内容が記載されています。この作品は大げさではなく日本人必読の一冊だと思います。

さまざまな識者のコラムにも傾聴すべき提言が数多く含まれた第17回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞受賞作品です。

識者のラインナップ(敬称略)は作家・平田オリザ日本語学校校長・江副隆秀、移民政策研究所長・坂中英徳、自民党石破茂、作家・堺屋太一、未来を創る財団・石坂芳男、連合・安永貴夫、元警察庁長官・國松孝次など。

いずれも優れた知見、見識に溢れ、熟読玩味したい箴言も多く含まれています。

この本の帯にある「外国人に優しい社会は他者に寛容な社会につながる」という言葉が強く心に響く一冊です。

www.oizumi-tabunka.jp

さらに大泉町、さらには多文化共生を考えるうえで読んでおきたい一冊は…。

移民の詩 CCCメディアハウス

言葉と文化、生まれ育った環境、衣食住、遊びに学び、労働観、その違いは厳然と存在します。

 

とはいえ、もちろん意外な共通点もあります。そこに気づき、考えをめぐらすことも大切なことだと思えます。

 

それは人と人がしっかり向き合えば、喜怒哀楽の感情は湧き、愛憎、離別、相性の合う合わないなど、古今東西どこでも起こってきたことではないでしょうか。

 

これからも必要以上に違いを強調し、不寛容になる排斥やヘイトクライムなども発生しては消え、消えては現れることもあるでしょう。

 

しかし、共にこの国で働き、生きる外国人は増え続けることが予想されます。多文化共生、異文化理解を高めることが「日本の未来」を切り拓くカギの一つであることは間違いありません。

 

待ったなしで進む少子高齢化、労働力不足がもたらす「日本売り」から目をそらしていると、近い将来激しい人材争奪戦が予想されるアジア諸国との競争に敗れ、「こんなはずではなかった」と苦水を飲むことになるでしょう。

 

そうなる前にこの三冊を読んで、「日本の未来」を考えてみませんか?

国際交流の第一歩とは?

厚生労働省が行っている最新の調査(令和三年10月現在)によると、日本では172万人を超える外国人労働者がこの国で働いています。

庶民レベルで外国籍を持つ方々との交流が進むと必要になってくるのはお互いの意思をスムーズに伝えるために共通のコトバを持つことです。

 

これには二つの方法があって、ひとつは日本人が「外国語」「外国文化」を学び、外国語運用能力を高めること。もう一つは出来るだけ多くの外国人に「日本語」を広めることです。

 

令和四年(2022)現在、1.5億人が利用する世界最大の規模に成長した言語学習コミュニティDuolingoでは学習アプリのダウンロード数が5億を超え、そのなかで日本語は第五位と高い人気を誇っているとのことです。

 

今後日本語を必要としない労働環境を整備することもひとつの考えではないかと思いますが、やはり日本語を楽しく学べる場所≒教育機関、上手く分かりやすく教える人材=日本語教師の育成は急務です。

より日本を、日本人を理解し、日本を選んでもらえるようにすることも重要ではないでしょうか。

 

言語学習の最大の目的

国際相互交流を目的とする言語学習の最も重要なことは、目の前にいる相手を知り、自分のことを目の前の相手に知ってもらうという人間としての相互理解であるはずです。

 

言葉や文化を学ぶ過程で、相手がどのような文化的背景を持つ人なのか?と理解するように絶えず努めないと無知や単純な誤解が原因でムダな衝突や摩擦が起こり、感情的な対立が生まれ、交流はうまくいかないでしょう。

 

私たち一人ひとりに問われていること。それはさまざまな思い込み(認知バイアス)の呪縛から自らを解き放ち、虚心坦懐、人と向き合うこと。

私たちは多様性を認め合い、「ありがとう」という感謝の言葉から始まる異文化理解の道を歩んでいきたいと考えているのです。

 

今日ここからはじまる試みを異文化理解力を高めたいとすべての方と共有していきたいと思います。多様性を認め合う未来を共に歩んでまいりましょう。どうぞよろしく!

基本コンセプトシート