脳の基本的な性質を理解することから始めましょう。
誰にでもある認知バイアス、思考・行動のクセ。
私たちは自分の考え方≒思考や行動のクセをどれだけ自覚しているでしょうか?
人間の脳には古今東西ほとんど変わっていない性質があることが分かってきています。
これからも「脳」、この謎めいていて、不可思議で、魅力的な器官についての研究は進んでいくことでしょう。
まずは現時点における研究成果を眺めながら、一緒に考えてみませんか?
脳の基本的な性質とは?
- 命にかかわる大切な情報以外はすぐに忘れる。
- 覚えるよりも忘れるほうが得意。
- 忘れにくい記憶は繰り返し理解し、五感を刺激して覚える「復習」で作る。
- 「読む、聞く」という入力系の学習よりも、「書く、話す、伝える」という出力系の努力で記憶を長持ちさせることができる。
- 小テストなどで自らを試し、そこで間違えることで、記憶を強化する。
- 繰り返し使うことで、記憶の番人「海馬」は「大事な情報」だと認識する。
- 「忘れる」「覚える」を繰り返し、記憶の倉庫「大脳皮質」に保管される。
- 24時間同じ性能を発揮できるわけではない。
- 活発に働きたい時間と休みたい時間がある。
- 基本的に怠け者で、楽するようにできている。
- 生活リズムと脳の活動周期のリズムを一致させる努力、強制が必要だ。
- その気になれば脳は活動的になるわけではない。やればできるわけではない。
- 脳は栄養、報酬を欲しがる=「欲しがる脳」。だから食べ過ぎ、飲み過ぎが起こる。
- 過度の「○○依存」は刺激を求め続ける深い闇のような神経回路で起こる。
- 脳は「いいかげん」だからこそ役に立つ。
- 「忘れる」ことは情報を振り分け、選び、記憶から排除する人間が手に入れた柔軟さであり「応用力」。
- 脳にも筋肉と同じようにウォーミングアップが必要。
- 成長、進化、改善のためには根性論、意志の力、動機付けに頼らない方法はある。
ざっと例を挙げても、枚挙に暇がないほどです。
しかし人間は他者、社会との関わりを「面倒だ」と避けていると、脳のより原始的な機能である感情系の要求に従って動くようになります。
感情系の「快」ばかり求める生活とは?
- やりたいことだけをやりたいようにやる。
- 話したいことを話したいように話し続ける。
- 他人の話は聞きたくない。聞きたいことだけ聞く。
- 寝たいときに寝たいだけ眠る。
- 食べたいものを食べたい時に食べたいだけ食べる。
- 自分以外の他者の干渉を極端に避ける。
- カラダを動かすことを面倒だと考え、何もしない。
- 会話による相互理解は面倒だと考えるようになる。
- 「○○依存」に拍車が掛かる。
- 思い通りにならないのは他人、社会のせいだと考える。
こうして心身ともに健康の源である「生活のリズム」が崩壊していくのです。
さらにコミュニケーション能力が徐々に失われ、加齢による老化の進行と相まって、著しく運動機能が低下したり、認知機能が低下したり、心身にも悪影響が出て、やがてさまざまな病を得ることが多くなる…。
これでは何のために生きているのか、その意味すら曖昧に思えてきます。
人間には社会性が必要です。とはいえ、本来変化を嫌い、安定したリズムのなかで暮らすことを望む性質を持つ生き物です。
しかし、変化に対応しなければ生きていくことが困難になります。
この矛盾のように思える現実のなかで、どうすれば良いのでしょうか?
あなたがさらされている現実は本当に危機なのですか?
たとえば、会社員であるあなたはいま分社化、系列化、国際会計基準という大きな流れにさらされているというケースで考えてみましょう。
上場企業や持ち株会社傘下の会社組織に属する方は、「現場の正義VS.管理畑の正義」との対立構造や縦割りの弊害、「分断化」の罠にはまり、息苦しい風通しの悪さにたいへんな苦労をされているという方もおられることでしょう。
本社管理畑の人間だけで、保身と帳尻合わせのために数字をいじり、現実離れした事業計画が作成されることがあります。
計画立案者であるあなたは、いま現場でおきていることと目標のズレ、予想外の事態に対応していることの「目的」を正しく理解しているでしょうか?
本当の危機は「無知」「無関心」と「想像力の欠如」から生まれる。
管理畑の人間やリーダー(指導者)がこうした目標と現実のズレ(GAP)に対し、実は「無関心」であったり、「想像力が欠如」していると、現場には負の感情が蓄積し、責任回避、自己正当化による責任転嫁と他者依存が蔓延り、個人、チーム、組織はどんどん活力を失い、学びや成長の機会もなく、恐怖に支配された滅びの道を歩むことになります。
「自分の正義VS.他人の正義」による分断化の罠にハマるな!
身近なところでは、思い通りにならないとすぐキレる人。大名気分でモノ言う人々。コロナ禍が招いた自粛警察と称する自らの正義を振りかざす人。
国際情勢を見れば、ロシア・ウクライナ戦争、火種を多く抱える朝鮮半島情勢、そして超大国・中国との関係。
「自国の正義VS.他国の正義」による分断化、対立による内憂外患の日々に右往左往という方も少なくないでしょう。
激動の外部環境ですら、「言い訳」と一言で片づけ、上からはその黒字計画の必達を強要される現場が世の中にはあふれています。
時間と自由、心理的安全性を奪われ、人と人の風通しの良いつながりすら分断され、無理な計画実現のために働かなければならない現実。
健康被害を筆頭に、命にかかわるさまざまな危機、過度の心理的抑圧、深刻なハラスメント(嫌がらせ)に遭わないという保証は誰にもないのです。
こうした環境では個人もチーム、組織も成長は望めないでしょう。
そこで自らに問い直してみませんか。
あなたが何を恐れ、何に怯えているのか?
- そもそもステレオタイプの「はじめに数値目標ありき」ではないのか?
- 「右肩上がりの成長」は本当に必要なのか。
- 誰の顔色に怯えているのか?
- 理不尽な悪口、愚痴、頭ごなしの否定、叱責、暴力。
- 評価基準が厳しすぎる「~すべき、こうあるべき」という「べき論」に怯えていないか。
そんなものに囲まれて、無理して、カラダを壊してまで、いま突き付けられている他人の価値観、評価基準に合わせようとする必要が本当にあるのでしょうか?
戦後思想界の巨人、吉本隆明著「ひきこもれ」
2002年に大和書房から出版されたこの本は4年後文庫化、さらには2020年に新装版がSBクリエイティブから出されています。
一人でこもって誰とも顔を合わせずに長い時間を過ごす。『分断されない、ひとまとまりの時間』をもつことが必要なのだとぼくは思います。一人でこもって過ごす時間こそが『価値』を生むからです」「『孤独』ということを、どこまで自分の中に呑み込んで、つきつめていけるか。その上で、どこまで風通しよく生きていけるか。それを目指していこう」“思想界の巨人”が普段着のことばで語る、もうひとつの社会とのかかわり方。ー「BOOKS」データベースからの引用
積極的にまとまった時間を確保し、孤独を呑みこみ、心身を理不尽な外圧から守るために、
いまいる場所の淀んだ空気から離れてみたくなったら、この一冊を手に取ってみてはいかがでしょうか?
心地よい風通しの良い場所、居場所をしっかり確保して、ゆっくり時間を掛けて、何度も読み込めば、あなたの傷んだ心に響く箴言に溢れていることに気づくことでしょう。
好事門を出でず悪事千里を行く
中国・宋の時代(960~1279年)、晩唐武宗以後五代までの史事を記載し、朝野の逸聞、民情風聞を多く含み貴重な史料として知られる孫光憲(896-968)によって書かれた『北夢瑣言』(ほくぼうさげん)には「好事門を出でず、悪事千里を行く」という言葉があります。
その意味は「よい行いや評判はなかなか世間に広まるものではないが、悪い行い、うわさ、評判はあっというまに広まるものだというたとえ」です。
この言葉にも人間が自らの思考・行動のクセ≒認知バイアスの罠に嵌りやすい性質を持っていることが言い表されています。
「人の不幸は蜜の味」という言葉があります。だれかが失敗したときには、実際に脳の「報酬系」「快楽中枢」と呼ばれる場所が活発になることが確認されています。
これは個人の意思とは関係なく、人の不幸を見ると私たちは「快感」を覚えてしまうということです。脳の仕組みを考えると、幸せそうな姿を見て、ドロドロした感情すなわち嫉妬を覚えてしまうことも、だれかの不幸や失敗を見て喜んでしまうのも、避けられないことなのかもしれません。
しかし負の感情が蓄積するばかりの毎日を送るために私たちは生きているのではありません。
だからこそ、こうした脳の罠(トラップ)にとらわれず、広く社会に通用し、存在価値が認められる性質とは何か?
このことを個人で真剣に現実と向き合い、風通しよくチームで共に考え、組織で歴史と知見に学び、共に改善する必要があるのです。
改善の道程であなたが「感謝するこころ」を失っていなければ、きっとうまくいくでしょう。
素直に「感謝」をハッキリと伝えるスキルは生涯にわたって有効な「資産」となるのです。
チーム・組織の活性化と成長を促す「OODAループ」とは何か?
日々さまざまな個人、チーム・組織の構成メンバー、指導者から相談を受けていて感じることがあります。
社員が生き生きとして働き、社内には笑顔があふれ、身振り手振りを使って伝える努力を自然に行い、心理的安全性が担保され、活気が満ちているチームがあります。
そのチームでは問題や障害克服に向けて果断に取り組み、解決へと導くリーダーが育っています。
いったい何が違うのだろう?と考え、注意深く観察していると次の五点に気づきました。
成長し続けるチームの5つの代表的な特徴とは?
- 好意的な評価のキャッチボールができ、誉め上手が多い。
- 素直に、真剣に、こころを込めて「感謝」を伝えている
- 構成メンバーの会話を促す仕掛けに工夫がある
- 7W4Hを明確にして、身振り手繰りをはじめボディランゲージを上手に使っている
- 観察力が高く現実と目標のズレを自覚している
この5つの特徴に加え、表のように「OODAループ」が健全に機能していて、ほれぼれとするようなチームの構成メンバーはみな魅力的なのです。
話していても「何と魅力的な若者たちだろう」と心底感じられるメンバーです。
これぞまさに「学習し続け、失敗から学び、挫けない、しなやかな個人、チーム、組織」なのです。
次回は成長し続けるチームが大切にしている共通項とは何か?それを深く掘り下げてみたいと思います。ご期待ください。